慶應義塾大学戦略構想センター(KCS)は、東アジア研究所との共催により、2026年4月3日、第6回目となるエキスパートラウンドテーブル(ERT)を開催いたしました。講師にオックスフォード大学講師のエドワード・ハウエル氏をお招きし、「新たな枢軸は形成されるのか――北朝鮮・ロシア・中国・イランをなぜ注視すべきか(”A New Axis of Upheaval? North Korea, Russia, China, Iran—and Why We Should Care ”)」というテーマでご講演いただきました。
研究者や政策専門家らが参加したERTでは、まずハウエル氏より近日公刊予定の新著『A New Axis of Upheaval: North Korea, Russia, China, Iran』に基づき、中国、ロシア、イラン、北朝鮮からなるCRINKと呼ばれる国家群について、近年の動向や協力動態の変化について、最新の情勢も踏まえて、お話しいただきました。歴史的な経緯から戦略的な必要性などのCRINK諸国が結束する要因や、非対称な二国間関係という特徴的な結束の形態を踏まえた各国の二国間関係の現状分析と展望、ウクライナ戦争において孤立するロシアに対して下位国家とみられていた北朝鮮が行った実質的な支援とイランに対する中露の修辞的なものにとどまる援助の違いに基づく力関係の考察、北朝鮮の抑止に向けた日韓によるアメリカの役割の補完や結束を強めるCRINKに対して西側諸国が懸念を強める必要性などが示されました。また、ご専門の北朝鮮については、非核化に向けた各国の圧力の低下や、北朝鮮の安価な労働力というCRINK内部での強み、ベラルーシなど対外政策の多様化を進める傾向が指摘されました。
質疑応答及びディスカッションでは、アメリカの対外関与が縮小した場合のCRINK諸国の動向や、指導国や重心のないCRINK諸国の「連携なき協力(Cooperation without Coordination)」という特異な関係性、協力分野として見落とされがちなサイバー空間やインテリジェンス協力の重要性、アメリカとその同盟国への対抗という共通点の役割、国内的イデオロギーの違いやウクライナ戦争の帰結といったCRINK諸国の潜在的な脆弱性、北朝鮮との対話の開始に向けた条件に関して、南北統一から自国の安全保障と核保有国の地位という北朝鮮の関心の変化やトランプ政権との関係において個人間と国家間関係を区別する必要性、新冷戦と呼べる国際秩序に対するCRINK諸国の認識の違いと北朝鮮が利益を得ている点、事実上の核保有国という地位を認め軍備管理へと交渉の性質を変化させることがアメリカの朝鮮半島からの撤退などへの連鎖反応を引き起こす危険性、CRINKの結束の強化には外的な圧力とともに内的な論理も非常に重要であるという分析とともに、米欧と東アジア諸国は彼らを過小評価せず協力を深化させる必要性など、講師と参加者の間で活発な議論が交わされました。