慶應義塾大学・戦略構想センターは9月19日、クロアチア共和国アンドレイ・プレンコビッチ首相をお招きし、講演会を開催いたしました。
<登壇者>
アンドレイ・プレンコビッチ(クロアチア共和国首相)
伊藤 公平(慶應義塾長)
細谷 雄一(慶應義塾大学教授、KCSセンター長)
基調講演
クロアチア共和国のアンドレイ・プレンコビッチ首相は講演会で、国際秩序が揺らぐ時代に、日本とEUが共有する民主主義、人権、法の支配といった価値の重要性を強調しました。首相は、クロアチアがEUおよびNATO加盟後に高い経済成長を遂げた実績に触れ、半導体や環境分野における日本との協力、そして同じ価値を共有する国家同士が連携することの意義を訴えました。
細谷雄一センター長との対談
クロアチアは紛争を経験した国家として知られています。首相はクロアチアが約35年前に直面したミロシェビッチ政権による侵略と、ロシアによるウクライナ侵攻を比較し、少数民族の保護を口実として相手国のアイデンティティを否定するという侵略者のナラティブに共通点があると指摘しました。その上で、「侵略が領土獲得という形で報われはならない」と強調し、停戦と和平合意の必要性を説きました。さらに、クロアチアが国連の平和維持活動を通じて占領地を平和的に統合した経験を、紛争解決のモデルとして提示しました。
国際社会における日本の役割については、戦後復興を遂げた経済力、CPTPPの主導に見られる協調的な外交姿勢、そして世界有数の国際援助国としての地位に触れ、日本の貢献を高く評価しました。
Q&Aセッション
ロシアの脅威に対する見解や民主主義国家としての覚悟、地政学的に厳しい環境を有する日本の学術界、官界、民間企業の役割など、幅広いテーマの質問に応じました。首相は、ポーランド領空へのドローン侵入とそれに伴うNATOの協議発動を例に挙げ、ロシアの行動がヨーロッパ全体の安全保障を揺るがす深刻な脅威であるとの認識を表明しました。そのような脅威に備えるためには自国の防衛能力の強化は不可欠であると強調し、具体的な防衛力強化策として、NATOが掲げるGDP比での防衛費増額目標や、クロアチアが若い世代を対象に2ヶ月間の基礎的な軍事訓練を導入する方針を説明しました。日本の各界に対しては、特に人工知能などの技術革新の分野で学術界や民間企業の動きに言及し、その先進的な知見を活かしていくことに期待を寄せました。